10年後「治療しておいてよかった!」
と思えるように、
ニキビは皮膚科で治療を。
今はニキビを予防する時代です。
ニキビは思春期頃にピークがあり90%以上の人が経験する、
顔面、胸部、上背部など、脂腺性毛包が多い部位に好発する疾患です。
軽症のニキビでもQOL(quality of life:生活の質)に影響を与え、
また一度ニキビの傷が残ると生涯において完治が見込めないことから、
長期にわたり患者さんを悩ます病気です。
将来ニキビ痕として残さないためには、今あるニキビを一日も早く治療する事が大切です。
しかし、本来治療が必要な初期段階を過ぎ、悪化した状態で来院される方が多くいらっしゃいます。
また発生の男女差はあまりないのに対し、治療に訪れる男性は女性に比べ圧倒的に少ないのが特徴です。
今、なかなかニキビが治らない方も治療を継続することで、症状は必ず落ち着きます。
今はニキビを予防する時代です。
10年後「治療しておいてよかった!」と思えるよう、ニキビができたら早めに皮膚科で治療をしましょう。
ニキビの原因
ニキビの原因としてホルモンバランス・ストレス・睡眠不足、生活の不規則、
不適切なスキンケアなどが挙げられます。
これらの要素が複雑にからみあってニキビが出来ています。
ニキビの発生には、皮脂腺からの油の分泌の増加、毛包の出口を塞いでしまう異常角化が関与しています。
ニキビの発生は以下の要素があります。
- 1男性ホルモンにより過剰な皮脂産生、皮脂や毛包出口の異常角化による毛包の閉塞
- 2ニキビ菌(ヒトに常在する嫌気性菌)の毛包での増殖
- 3複数の炎症伝達物質の放出
※毛包(もうほう):一般に毛穴(けあな)と呼ばれています。
ニキビはホルモンバランスの乱れ、食事、睡眠不足、便秘、ストレスなど、様々な生活習慣が関連してできやすくなります。
ですが、いずれか一つ正せば改善するものではありません。
また、
肌に直接的な強い刺激を与えると、ニキビや炎症が起きる原因となります。
ナイロン素材のタオルで肌を強くこすったり、肌に合わない化粧品の使用は避けましょう。
ニキビの発生機序
- 1ニキビの前段階(微小面疱)
- 一見、正常な肌に見えるニキビのでき始めの状態です。
顕微鏡的に見ると毛包の閉塞が認められます(微小面疱)。
- 2炎症のないニキビ(白ニキビ・黒ニキビ)
- 目に見える初期のニキビは面疱(白ニキビ・黒ニキビ)といい、
毛包の閉塞と毛包内に過剰な皮脂が蓄積することにより起こります。
- 3炎症を起こしたニキビ
(赤ニキビ・黄ニキビ) - 毛包内に蓄積した皮脂を常在菌であるニキビ菌が分解し、
毛包碧に炎症を起こすことにより紅色丘疹(赤ニキビ)に進行します。
さらに炎症が強くなり毛包壁を破壊すると膿疱(黄ニキビ)に進行します。
- 4ニキビ痕 嚢腫・結節・瘢痕
- 膿疱の炎症が深くに進行していくと、嚢腫・結節となり、
最終的に瘢痕(ニキビ痕)が残ります。
ニキビの治療薬
使用する治療薬は症状によって異なります。症状に応じた主な薬剤を記載します。
すべてのニキビ(急性期+維持期)
1ディフェリンゲル
主成分であるアダパレンはビタミンA 誘導体と類似した構造をもち、顆粒細胞から角質細胞への分化を抑制することにより毛包の角質層が薄くなり、毛包の詰まりを解消させる作用があります。
2べピオゲル
主成分である過酸化ベンゾイルは
フリーラジカル発生に基づく抗菌作用および角質細胞同士の結合を弛めて角層剥離を促し、毛漏斗部の角層肥厚を改善する働きがあります。
3エピデュオゲル
アダパレン+過酸化ベンゾイルの合剤、すなわち❶+❷です。2つの薬剤の相乗作用があり現時点でこの症状におけるニキビの最強薬です。
ただし刺激感などの副作用が強く使用には注意が必要です。
急性期の軽症から中等症のニキビ
4デュアック
成分は過酸化ベンゾイル+クリンダマイシンで❷の作用に❻の
抗菌作用を足したものです。
5アクアチムクリーム・ローション
細菌のDNAの複製を妨げ、殺菌的に作用するキノロン系の
抗菌薬です。
6ダラシンTゲル
細菌の蛋白質合成を阻害することで、抗菌力を発揮するリンコマイシン系の抗生物質で、嫌気性菌に強い抗菌力をもつのも特徴です。
7ゼビアックス油性クリーム・ローション
細菌のDNA複製に関与するDNAジャイレース及び、トポイソメラーゼⅣを阻害し抗菌作用を発揮するキノロン系合成抗菌化合物です。
急性期の中等症から重症のニキビ
抗菌作用だけではなく抗炎症作用も併せ持つミノマイシン・ビブラマイシンという抗菌薬を中心に、効果が認められない場合はルリッドやファロムなど効果が期待される抗菌薬をチョイスします。
- ・漢方薬:荊芥連翹湯、清上防風湯、十味敗毒湯、黄連解毒湯、温清飲、温経湯、桂枝茯苓丸
- ・イオウ製剤
- ・ケミカルピーリング(保険適応外)
ニキビ治療方針
治療のポイント
その都度、症状に合わせた薬剤を選択し処方します。指導通りの療法を継続的に行っていただくことが大切です。
ニキビ治療は現在の症状を改善するだけではなく、ニキビ痕を残さないことがとても重要です。
そのためにはより早く治療し、ニキビを予防する事が大切です。
最終的に10年後、綺麗な肌でいるために治療を続けましょう。
ご自宅でのケア
投薬以外には以下のケアをご自宅で行って下さい。
- 1毎日1~2回程度石鹸で洗顔。石鹸をよく泡立て、患部を刺激しないのがポイントです。
- 2スキンケア化粧品でニキビができる方は、
低刺激性でニキビの出来にくいノンコメドジェニック・ハイポコメドジェニックの
基礎化粧品がおすすめです。 - 3ベースメイクを行うことは問題ありません。
むしろ、ファンデーションを使うと患部を触る回数が減ることから、ニキビ予防に良いという報告もあります。 化粧品は低刺激性でニキビの出来にくいノンコメドジェニックの製品の使用をおすすめします。
ファンデーションを塗る際は擦り付けるような刺激は避け、化粧を落とす際もこすらないよう注意してください。 - 4汚れた手指でニキビを触ること、膿の溜まったニキビを自分で潰すことは厳禁です。ニキビ痕の原因となります。
※ノンコメドジェニックな基礎化粧品はドラッグストアや百貨店等で購入できます。(速水皮膚科では販売しておりません。)
日常生活での注意
よく患者さんから「生活習慣で何を正せばいいですか?」と聞かれますが、
日常生活から完全にニキビの要因を取り去ることは簡単ではありません。
例えば、仕事のストレスが原因でも、ニキビ治療のため「仕事を控える」というのは患者さんにとって現実的ではないからです。
治療を行うと同時に患者さんのQOL(生活の質)を高めないと意味がないと考えています。
患者さんそれぞれの生活を優先し、過度な制限はせず、バランスをとることが重要です。
ニキビ治療で
よくいただくご質問
- Q
肌の赤みや吹き出物など、肌荒れに悩んでいます。軽症でも受診していいですか?
- A
軽症からの治療が大切です。ぜひ受診してください。
- Q
ニキビが酷くなるまで放置してしまいました。驚かれないか心配です。
- A
ぜひ診察させてください。より良い肌になるよう治療しましょう。
- Q
ニキビ跡の治療は可能でしょうか?
- A
今の医学では完全に消し去ることはできません。少しでも良くなるように治療を行いましょう。
- Q
マスクの常用で度々肌荒れが起きるようになりました。皮膚科で見てもらえますか?
- A
マスクによる肌荒れのご相談が増えています。ぜひ早めに受診してください。
にきびは出やすい年齢の時期があり、その時期を乗り越えたら落ち着くもの。
ですから、今なかなかにきびが治らず悩んでいる人も、いつかは落ち着きます。
辛い時期を一緒に患者さんと乗り越えていけたらというのが速水皮膚科の方針です。
淳史院長